2008-06-06

「18年後プロジェクト」

 ちょうどほど4年前、こどもが生まれる直前。漠然とあたまに描いていた「18年後プロジェクト」なるものがある。
 一般的に、学生時代というものは、体力は有り余っていて、暇ももてあましているが、如何せん、知恵と金がない。社会に出て働き始めると、体力と金と知恵はそこそこだが、とにかく暇がない。おそらく、リタイアすると、金と知恵と暇はあるが、体力が落ちる。そこで、自身の学生時代の反省も踏まえ、自分のこどもに対して、「体力と時間のある若いうちに、「金」を支援しながら、同時に「知恵」を付けさせる」といった主旨の話である。
 具体的には、息子が大学に入った頃を見計らって、...50万円なのか100万円なのか...とにかくまとまったお金を、自分のこどもに「委託」する。単に無償で投資をするわけではなく、資金援助の対価として、何でもいいから興味のある分野に対して、目に見える「成果物」を提出させることを条件とする。海外に飛び出て写真集を作る、株に投資する、事業を立ち上げる、、、発想はいろいろあっていい。
 そのためにまず、綿密なプロジェクト企画書を書かせる。成果物の具体、実施方法、スケジュール、コスト、クオリティ… 成果の妥当性や、それを実現するための企画書が通らなければ、資金援助はしない。企画が納得のいくものまで完成度が上がれば、親はこどもとの間で、きちんとした「契約」を結び、成果を求める。

 昔、仕事で、初めてヒトサマに見せるちょっとまとまった文章を、短期間のうちに、本腰入れて書かねばならないという、いわば「尻に火」がついた状態で、樺島忠夫著「文章構成法」(講談社現代新書)という本に出くわした。その本中で引用されている一節(原文はアメリカの技術者、T・G・ヒックスというヒトが書いた本らしい)が、大変印象深かった。
『技術記事を書くこと』の意欲付けは、
 1.あなたの専門分野の知識を広める。
 2.会社の業務の助けになる。
 3.あなたとその会社が名声をえられる。
 4.主題に関しての知識が増進される。
 5.特別な収入が得られる。
 この5つの報酬が得られることである。

 「文章構成法」では、「小中学生に、ただ『作文を書け!』と言っても、何の報酬もないし、書きようがない」「『感動したことを書けばいいんだ!だから、感動しろ!』と言っても、そう毎日感動することなんて無い」ということを言わんとしている。「問題意識を持つ」「成果物を完成させる」「レポートを書く」...こうしたアクションを誘発するモチベーションとして、「名声を得る」「収入を得る」というのは社会生活であれば普通のことである。それを決められた時間内で達成させなければならないからこそ、人は必死に考えて、オリジナルの文章を書き、即ち、「無」から「価値」を生み出すことができ、それがビジネスとして成り立ちうる。「文章構成法」で指摘されている「意欲付け」は、実はプロジェクト・マネジメントにも大いに類似していて、「動機」や「目的」がないと、プロジェクトは発生しないし、むりやり始めたとしてもいい成果は得られず、破綻する。

 多いようで少ないような、そこそこ中途半端にまとまったお金。願わくば、学生時代のうちに、「プロジェクト志向」「契約」というビジネスの基本、また「レポーティング能力」を身につけさせることができれば、一石多鳥。その後社会に出ても、きっと何かと役に立つんじゃないかなぁ、と...4年前に、漠然と考えた...。

 あたまの片隅にしまってあった「思い」を、最近また、あたまの隅から再度引っ張り出して、練り直している。将来、こどもが、そういう思考にスムーズにつなげられるためには、今から、「あそび」を通じてどんな準備ができるだろうか。実は「プロジェクト志向」は、やりようによっては、こどものうちでも身に付けさせることができるのではなかろうか。3歳児に100万円は準備できないけど。

 そんな想いが、ここ数日、ぐるぐると頭を駆巡っている。   ...続く。

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